通導散

 過去に最近運動をしなくなって、お腹が張って痛むという80代の肥満男性に通導散を処方して、お腹がスッキリしたと著効したことがありました。
 
 こういうときって、西洋薬では整腸剤や月次な便秘薬を処方して、終いなのですが漢方の幅があると奥が深まります。
 
 例えば、私のイメージでは今回取り上げる通導散は便を柔らかくする酸化マグネシウムと大腸の働きを促進するピコスルファートやセンナを合わすだけでなく、それらを調和するが如く気を動かしたり、血を補い、動かしているような処方です。
 
 中々、西洋薬では単剤でココまでの働きを齎すことは難しいと考えます。
 というのも、西洋薬では期待されている作用機序が一つに対して、漢方薬では複合的な生薬の組み合わせによりなります。
 
 医師三年目となり、使える幅が広くなると楽しみが増えますよ。
 では、参ります。
 
 
通導散の概略
 
・通導散は中国・明時代の『万病回春』に収載された処方です。
・「通導」とは、瘀血により生じた便秘、尿閉を通じ緩解する働きのことです。
・明治時代から昭和初期にかけて独自の漢方医学体系である一貫堂医学を創始した森道伯(1867~1931)が瘀血証体質に対して通導散を盛んに用いました。
・体力が充実した女性によく使われる薬で、桃核承気湯に比べてより精神神経症状が強い場合に用いられることが多いです。
 
 
  • 出典 
跌てつぼく撲(打撲)傷損きわめて重く、大小便通ぜず、すなわち瘀血散ぜず、肚腹膨脹し、心腹を上り攻め、悶乱して死に至らんとする者を治す。先づこの薬を服し、死血、瘀血を打ち下し、然して後に方に補損薬を服すべし。
 
龔廷賢著『万病回春』折傷門
 
 打撲・捻挫などによる外傷性瘀血を原因とした急性症状・慢性症状共に、瀉下・利尿により駆瘀血を図る薬であり、外傷に因らない瘀血に対しても使用されています。
 
 矢数道明先生は『臨床応用漢方処方解説』より「打撲による内出血、瘀血による諸疾患」に対して用いており、
 
 桑木崇秀先生は『新版漢方診療ハンドブック』より、「顔色もよく、体力もある便秘傾向の人の、月経困難ならびに婦人科諸疾患、打撲による鬱血、その他、月経異常、または瘀血を伴うと思われる諸病に単独または兼用で用いる。」と記載があります。
 
 
腹証
 
 
 腹証も非常に参考になります。
 上記の私の患者さんでもお腹の所見を参考に、決め手としました。
 
 
腹力中等度かそれ以上。瘀血圧痛点と腹部膨満を認め、ときに心下痞鞕を伴う。
 
1.腹直筋に相当して上腹部に強い緊張を触知。
2.瘀血により腹部全体が膨満しているもの
 
矢数格著『漢方一貫堂医学』)
 
構成生薬
 
・当帰
性味:甘辛温
効能:補血、和血、調経、止痛。
 
・紅花
性味:辛苦甘温
効能:活血通経
 
 
・蘇木
性味:甘鹹
効能:活血化瘀、止痛消腫
 
・枳穀
性味:苦酸、微寒
効能:理気化痰
 
・厚朴
性味:辛苦温
効能:実満を瀉し、痰を消す
 
・陳皮
性味:辛苦温
効能:理気、化湿、化痰、止嘔。
 
・大黄・芒硝
性味: 大黄:苦寒、芒硝:鹹寒
効能: 2味で芒硝で潤燥し大黄で湿熱を排泄し、瀉下
 
・木通
性味:苦寒
効能:通経、清熱利湿、利水
 
・甘草
性味:甘平
効能:諸薬を調和する
 
  • まとめ
当帰、紅花、蘇木:駆お血剤
枳穀、厚朴、陳皮:理気剤
大黄・芒硝:瀉下
甘草
 
駆瘀血、理気、瀉下、利水の薬味が配合されて協力して働いています。
 
  • 漢方的適応証
瘀血+気滞(胸苦しさ、脹満、便秘)
病位は胃・大腸
脈:沈渋、あるいは弦
舌:暗紅、紫。白苔あり
腹: 腹皮拘急、下腹部は膨満・抵抗
 
 
 瘀血だけでなく、気滞を取り除くというのが、便は出てるけどガス腹で苦しいという症状のある人に効果があります。
 
  • 中医学的適応症
効能:理気活血・破血逐瘀・瀉下
 
 
以上です。
 
 
 
 

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