漢方の脈診についての記事をよければ参照ください。
復習

関が橈骨茎状突起に相当します。その遠位部が寸、近位部が尺となります。
右手と左手で対応する臓器が異なり、以下のようになります。
右手:寸:肺 関:脾臓 尺:心包
左手:寸:心臓 関:肝臓 尺:腎臓
そして、脈診の基本の考え方で大切なのは以下の4つです。【浮脈】 指を軽く当てるだけですぐにはっきりと触れる脈【沈脈】 指を軽く当てただけでは拍動を触れず、深く圧迫して初めて触れる脈【実脈】 按圧している指を力強く押し返してくる力のある脈【虚脈】 按圧している指を力強く押し返してくる力のない脈
先ずは、対応する臓腑を覚え、大きく2段階で脈を触れてみることからスタートしてみてください。軽く触れてみて浮脈を確認し、少しずつ強く脈を押していき沈脈を確認する。
右寸口脈がその他より沈んでいる。
気が上へと登りにくいと、「右寸口脈」がその他より沈むという脈を呈します。漢方的にいうと、「大気下陥」、「気陥」です。
具体的な症状はというと、
●眩暈(めまい)。
●呼吸微弱・無気力・疲労倦怠。
●自汗。
●活動時に諸症状悪化。
●気虚の症状+
●脘腹部の下垂感。
●久瀉(長期間続く下痢(泄瀉)(泄瀉))。
こんなときに補中益気湯!
こんなときに役立つのが補中益気湯です。
名前の通り、中(胃)に補い、気(元気)を益すお薬です。
すべてに力なく倦怠感の著しい人に用いることが出来ます。
構成生薬は
人参(ニンジン)、蒼朮(ソウジュツ)、黄耆(オウギ)、当帰(トウキ)、陳皮(チンピ)、大棗(タイソウ)、柴胡(サイコ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)、升麻(ショウマ)
人参+肝臓で脾を補い気を益す、黄耆や升麻+柴胡で胃中の清気が沈んでいるのを引き上げて元あるべきところに治すという効果があります。
実際の体験
それぞれの患者様は右寸口脈微弱、下向きがちな印象で、声も張りがないという共通項があり、補中益気湯を処方しました。
患者様①
87歳女性
感冒後に倦怠感感が持続して「家族旅行が1ヶ月後に控えているから元気の出るお薬をください」と来院された。上記所見を認めて補中益気湯を服薬すると、徐々に元気が出てきて家族旅行に元気な状態で参加出来ましたと報告くださりました。
患者様②
84歳女性
るいそうあり。元気がない。首が痛むということで来られて、補中益気湯を処方しました。悪性腫瘍やその他の除外もしつつ、やはり、飲んでいるときのほうが元気があるということで服用を継続しています。
患者様③
80台女性
ポリファーマシーの如く14剤の薬剤を服用しており、最近元気がないということで来院となりました。よくよく薬歴を確認するとここ一ヶ月で漢方薬処方が補中益気湯から防已黄耆湯に切り替わっていました。脈診やその他症状も上記のようであり、補中益気湯を再度服用するように処方しました。すると、たちどころに体調が戻ったと、喜んでいました。
50台男性
患者様④
糖尿病で通院中の方です。受診のときに、体中が針で刺されたような痛みがアチラコチラに出る。この痛み自体は随分長い間悩まれていたようです。痛み止めを飲んだことがあるが対して効かないということで悩んでおられました。その他所見としては、元気がない、声に張りがないです。脈診からも寸口脈沈微細であり補中益気湯を処方しました。すると、次回受診にはすっかり消失しており、その後も半年以上同様の痛みは出ておりません。
まとめ
脈診もすごく難しい技術なようですが、私のような素人でも気をつけてみるとわかるポイントがあります。前回の浮脈や今回の寸口脈沈など。
是非試してみてください。
そして、自身でも日々脈を見ながら元気がないときは脈を触ってみてください。
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