どうも研修医一年目の華岡です。
来週から遂に病棟業務が始まりこんなにのんびりとした土日を過ごすのはなかなかできなくなるでしょう。
先日の研修でこのような問いかけがありました。
縁起
あなたは研修医一年目です。92歳の担当患者さんが週末にかけ、呼吸不全が悪化しお看取りももうすぐである。
ですが、あなたはこの土日に親友の結婚式があります。結婚式会場には土曜の午前中に飛行機で向かい、日曜の午後に飛行機で帰ってくる予定です。
あなたならどうしますか?
臨床に出て患者さんを受け持つというのは常にこのような課題が付きまとうのかと思います。
この問題に関しては、患者さんとの関係、患者家族との関係、指導医との関係、同期との関係、
または、自分と親友との関係や、自分の信念もしくはプロフェッショナリズムとの関係など様々な関係次第なところがあるかと思います。
唐突ですが、仏教には古くから「縁起」という考え方があります。
これに因りてかれ有り、これ生ずれば則ち生ず、これ滅すれば則ち滅す、これ無ければ則ち無し。
by 増一阿含経
簡単に言えば、一切のものは相互に依存し合っているということでしょうか。
医療現場ほど、この「縁起」を感じられる場所はないのではないかなと思います。
常に「縁起」に悩まされ、そして感謝し、
人間という「間の存在」を認識する場ではないかと思います。
東洋にはこの「間」を重視する考えが古くから根付いています。
三焦
当然、中医学の中にもその「間」の概念が残っています。
三焦(さんしょう)とは、伝統中国医学における六腑の一つとされ、大腸・胃・小腸・胆・膀胱は実体が理解できる腑であるが、三焦は、働きだけがあってカタチがないものとされています。
以下に、古典による三焦の説明を引用します。
三焦は原気を擁しその原気は五臓六腑(裏)栄衛(半表半裏)経絡(表)のみならず全身すべてに行きわたる。
三焦は全身に通じており原気は巡ってすべてを管理統括する。
by 中蔵経
十二経脈は生気の原に係わっており十二経脈の根本をなす。腎間の動気とも云う。
生気の原は五臓六腑の本、十二経脈の根、呼吸の門である。これは三焦の原で人の生命活動の根本である。
by《難経八難》
難しい説明かもしれませんが、中医学では各臓腑を繋ぐ「三焦」の機能が重要視されていました。
西洋医学における間質の位置づけ
それに対して西洋医学では2018年3月27日に、
米ニューヨーク大学医学部を中心とする研究プロジェクトが、科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」で研究論文を発表しました。
「皮膚の下にあり、消化管や肺、泌尿器系に沿ったり、動脈や静脈、筋膜を囲んだりしている層は、従来、結合組織と考えられていたが、実は、体液を満たし、相互に連結し合う区画が、全身にネットワーク化されたものであることがわかった」とし、「これを間質という新たな器官として定義すべき」と世界で初めて提唱しました。
これから間質における注目が高まり、研究もさらに進んでいくことでしょう。
結論
この間質を新たな器官とする提唱が認められ定着するかは別として、
東洋ではフィシス(自然)的に直感でものごとを捉え自分たちの理論に落とし込み、この「間」に関する機能や役割というのが
2千年以上前にもわかっていました。
西洋の考え方ではようやく、現在になってようやく「間」に対する機能に注目をする段階です。
漢方を勉強しているとこのようなことはたくさんあります。
漢方では常識だが、あれこれは西洋医学では新しいことだったんだと。
漢方の中には2千年以上前からの先人たちの知識と経験が詰まりさらに長い年月をかけて淘汰され残されたものが現在に伝わっています。
西洋医学でわかっていない事柄が、漢方で対処できることも多々あります。
これはまさに両者は経糸と横糸のような関係です。
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