知らないでは済まされないCTRXの落とし穴

 患者様で、焚き火が趣味で焚き火のユーチューブ動画を見ながら酒をチビチビ飲むのが最高だと語っておられました。その御蔭か、最近は焚き火をしたくてたまりません。

 話は変わって臨床現場でも一回投与でよろしいCTRX、セフトリアキソン(商品名:ロセフィン)はかなり重宝しますよね。特に、認知症の患者さんでルート確保保持困難な場合に、「この100mlだけ、点滴を!」というときなど。

 そんなロセフィンですが、皆さん副作用ご存知ですか?

 添付文章を確認しました。

主な副作用
 
発疹 、 下痢 、 過敏症 、 蕁麻疹 、 嘔気 、 軟便 、 食欲不振 、 菌交代症 、 口内炎 、 カンジダ症 、 ビタミンK欠乏症状
 
 
重大な副作用
 
アナフィラキシー 、 不快感 、 口内異常感 、 喘鳴 、 眩暈 、 便意 、 耳鳴 、 発汗 、 呼吸困難 、 顔面浮腫 、 汎血球減少 、 無顆粒球症 、 白血球減少 、 血小板減少 、 溶血性貧血 、 劇症肝炎 、 肝機能障害 、 黄疸 、 重篤な肝炎 、 AST上昇 、 ALT上昇 、 γ−GTP上昇 、 間質性腎炎 、 偽膜性大腸炎 、 血便 、 重篤な大腸炎 、 腹痛 、 頻回の下痢 、 中毒性表皮壊死融解症 、 Toxic Epidermal Necrolysis 、 TEN 、 皮膚粘膜眼症候群 、 Stevens−Johnson症候群 、 急性汎発性発疹性膿疱症 、 間質性肺炎 、 肺好酸球増多症 、 好酸球増多 、 PIE症候群 、 発熱 、 咳嗽 、 胸部X線異常 、 胆石 、 胆嚢内沈殿物 、 胆嚢炎 、 胆管炎 、 膵炎 、 尿路結石 、 腎結石 、 尿量減少 、 排尿障害 、 血尿 、 結晶尿 、 腎後性急性腎不全 、 精神神経症状 、 意識障害 、 意識消失 、 意識レベル低下 、 痙攣 、 不随意運動 、 舞踏病アテトーゼ 、 ミオクローヌス 、 ショック症状 、 急性腎障害
 
 
上記以外の副作用
 
低プロトロンビン血症 、 出血傾向 、 ビタミンB群欠乏症状 、 舌炎 、 神経炎 、 注射部位反応 、 注射部位紅斑 、 注射部位疼痛 、 注射部位腫脹 、 浮腫 、 貧血 、 発赤 、 そう痒 、 紅斑 、 顆粒球減少 、 好塩基球増多 、 血小板増多 、 異常プロトロンビン 、 嘔吐 、 頭痛 、 心室性期外収縮
 
 
 
上記のように、こんなにもたくさんあるのですね。
この中でも、特にわたしが気をつけていたのは「胆嚢炎、胆管炎」です。
 
 
石川らの報告(日本化学療法学会雑誌 Vol. 66 No. 6)によると、
 
 第3世代セフェム系のceftriaxone(CTRX)投与による多くの偽胆石症は自然消失するが,0~19%に腹痛・嘔気・嘔吐などの症状を認め,まれに急性胆嚢炎などの合併症もあり、
 したがって,CTRX 投与に際して腹痛や肝機能障害などを認めた場合には,偽胆石症の発生を念頭に置いて腹部超音波検査や腹部単純 CT 検査を行い,薬剤投与中止を含めて適切な対応を行う必要があると報告されています。
 
 
 
 
 本日の論文は、小児におけるロセフィンの副作用についてです。
 
 最重要点は小児ではロセフィンの副作用で免疫性溶血性貧血というのがあり、鎌状赤血球症の小児で起こりやすく、死に至る可能性があります
 
 

Safety of ceftriaxone in paediatrics: a systematic review.

Zeng L, Wang C, Jiang M, et al. Arch Dis Child. 2020 Oct;105(10):981-985. doi: 10.1136/archdischild-2019-317950. Epub 2020 Mar 6. (Systematic review)

目的:小児患者におけるセフトリアキソンの安全性を判断し、小児患者におけるセフトリアキソンの副作用(ADR)のカテゴリーと発生率を系統的に評価すること。

方法:Medline、PubMed、Cochrane Central Register of Controlled Trials、EMBASE、CINAHL、International Pharmaceutical Abstracts、International Pharmaceutical Abstracts、および2018年12月までの関連論文の書誌で、=18歳の小児患者におけるセフトリアキソンの安全性を評価したすべてのタイプの研究を対象にシステマティック検索を行った。

結果:セフトリアキソンを投与された小児患者5717人を含む112件の研究が包含基準を満たし、1136件のADRが報告された。プロスペクティブ研究で報告されたADRのうち、最も頻度が高かったのは消化器(GI)障害(37.4%、292/780例)で、次いで肝胆道障害(24.6%、192/780例)であった。セフトリアキソンの休薬または中止に至る重篤なADRは、86人の小児患者で報告された。免疫性溶血性貧血(34.9%、30/86例)と胆道偽胆石症(26.7%、23/86例)が2大原因であった。セフトリアキソン静注後の溶血性貧血は、鎌状赤血球症を原疾患とする11人の小児で死亡に至った。胆道偽尿毒症のほとんどは可逆性である。しかし、発生率は高く、小児患者の5人に1人(20.7%)に影響を与えた。

結論。消化器系ADRは小児患者におけるセフトリアキソンの最も一般的な毒性である。免疫性溶血性貧血と胆道偽胆石症は最も重篤なADRであり、セフトリアキソンの中止の主な理由です。免疫性溶血性貧血は鎌状赤血球症の小児で起こりやすく、死に至る可能性があります。セフトリアキソンは、鎌状赤血球症の小児には注意して使用する必要があります。

徒然に

 日本ではそもそも、鎌状赤血球症の方は少ないですが、グローバル化の流れで異人種のお子さんを治療することは誰にも起こりうることです。その際に、ここまで頭をよぎることが出来るかどうかは難しいかもしれません。が、死に至る可能性があるということは知らなかったでは済まされないことだと思います。

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