おめめ体操で転倒を予防しよう。

 今日は休日。

 定期的に本を数冊一気に購入をして三冊を気分に合わせて同時進行するという方法で読書を楽しんでいます。最近、届いた本はヘルガ・シュナイダー著「黙って行かせて」、鶴見俊輔・上野千鶴子・小熊英二著「戦争が遺したもの」、立木鷹志「接吻の博物誌」、河合香織著「セックスボランティア」。何かオススメ本ありますか?

 さて、今回の話題にも関係する高齢者の「転倒」について。

 以前担当した寝たきりの患者さんも、病歴をたどれば過去の二度の転倒に伴う両股関節骨折が契機で体重が20kgほど減量し、一気に廃用が進んでいったのが伺えました。

 「転倒」リスクを少しでも下げることが出来ればと、考えずにはいられません。

そこで今回の論文は、「バランスの改善:脳卒中後の転倒リスクを軽減するための眼球運動と視線安定運動の無作為化比較試験」ということで参ります。

最重要ポイントは、

 

  • 眼球運動と視線安定運動は実際の転倒と転倒リスクの推定に反映しているバランスを改善した。

 

  • 在宅での眼球運動と視線安定運動の実現可能性を実証した。

Better balance: a randomised controlled trial of oculomotor and gaze stability exercises to reduce risk of falling after stroke.

Correia A, Pimenta C, Alves M, et al.  Clin Rehabil. 2020 Sep 9:269215520956338. doi: 10.1177/0269215520956338.

目的:脳卒中生存者における転倒の発生率および転倒リスクに対する眼球運動および視線安定運動の家庭的プログラムの効果を評価すること。

デザイン:二群共同、非盲検並行ランダム化比較試験。

対象者。60歳以上の脳卒中生存者で、脳卒中後にロンベルグテストが陽性で自律歩行が可能な人。

設定:三次医療病院の理学療法外来。

介入:参加者全員が現在のリハビリテーションプログラムを達成した;介入群はさらに3週間の介入に無作為に割り付けられ、眼球運動と視線安定運動の家庭的プログラムが行われた。

主要評価項目:主要評価項目:一次アウトカムは介入開始後3週間までの転倒の発生率であり、さらに、Berg Balance Scale(4点)とTimed Up and Go Test(4秒)の両方で評価された転倒リスクの推定変動が二次アウトカムとなった。

結果:79人の患者が募集され、68人がプロトコールを完了した(対照群35人、介入群33人)。フォローアップ期間中、対照群35人中4人で転倒が登録され、介入群ではイベントは発生しなかった(P = 0.064)。転倒の推定リスクは対照群で11/35人、介入群で28/33人で減少した(RR 0.37;95%CI 0.22-0.62;P < 0.001)。

結論:眼球運動と視線安定運動の家庭的プログラムを3週間実施したところ、介入群では転倒リスクが有意に減少し、転倒は発生しなかった。これらの所見は、この有望な介入のさらなる調査を奨励するものである。

具体的な体操内容

それぞれのエクササイズを10回ずつ繰り返すのをご自宅でも試しながらリハビリをするという、それだけ!いや、でもこれを毎日繰り返すというのは中々に面倒そうですね。

 

何故、眼球運動が転倒予防に?

 平衡感覚を司る前庭系は頭部の動きを検出し、安定したイメージの維持や頭部移動時の姿勢制御を行い、歩行活動において非常に重要な環境条件へのバランス適応に貢献しています。


 前庭動眼反射は視線を安定に保つの第一のメカニズムです。前庭動眼反射は、頭部運動時の視線(空間内の眼球位置)を安定させ、頭部運動と同じ速度と反対方向の眼球運動を生じさせ、十分な視力を得ることができるようにします。歩行時にはこの機構が不可欠である。視線安定訓練は、単独で、あるいは他の前庭リハビリテーション戦略と併用して、いくつかの条件ですでに使用されており、障害の認知(片側性前庭欠損)を減少させ、姿勢安定性(健康な若年成人)とバランス(多発性硬化症)を改善するという報告がなされています・。

 本研究の目的は、眼球運動と視線安定運動の家庭的プログラムが、転倒の発生率と 脳卒中生存者における転倒リスクを調べることでした。

 見事、有意差のある結果となりましたのでお次は期間を3週間と言わず長くして更には大規模な結果を期待します。

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