以前、患者さんで左足が時折針に刺されるように痛みが走るという方がいらっしゃいました。その方はある疾患に対して抗癌剤治療を終えての入院期間中で体力的にも落ちている状態でした。漢方的に言うと、気血両虚証。
「気」と「血」のどっちもが足りない状態でした。
「気」とは簡単に言うと、「元気」の「気」です。気虚とは簡単に言うと、元気がありません。そして、左足の固定痛ではなく突発的に痛みが来るというのが、血の固定痛というよりは気の痛みかなと思います。
私があることをすることで、途端にその方の突発痛はまたたく間に無くなりました。何かわかりますか??
正解は、手でその足を触れること。そんないっつも触れていられないのでホットタオルで温めるようにしました。すると、それ以降はその痛みに悩まされることは一切なくなりました。
「温める」というのは、一見簡単なようですが、「薬」という方法に偏りがちな現代医学からすると近くて遠い方法だと思います。漢方的にいうと、陽虚による痛みかな。温める作用が弱いので、気の流れが滞ると固定痛ではない突発的な痛みが現れる。それを外から温めて陽気を補うような形だと思います。
是非、お試ししてください。
さてさて、本日の論文は疼痛に対して「温める」治療です。
ただ注意として急性の捻挫など腫脹や熱感など熱を持つ疼痛に対して温めると逆に悪くなるのでご注意を。
Properties of Thermal Analgesia in a Human Chronic Low Back Pain Model.
Chabal C, Dunbar PJ, Painter I, et al. J Pain Res. 2020 Aug 13;13:2083-2092. doi: 10.2147/JPR.S260967. eCollection 2020.
目的:長年、熱は快適さのために使われ、多くの臨床ガイドラインでは第一選択療法として鎮痛が推奨されてきた。しかし、慢性腰痛のような一般的な症状に対する温熱の実際の有効性や、発症時期、最適な温度、効果の持続時間などの要因については疑問が残っている。
材料と方法:無作為化二重盲検対照試験では、長年の腰痛を持つ被験者を対象に、45℃のパルス温熱(実験群、N=49)と37℃の定常温熱(対照群、N=51)の鎮痛反応を比較するように設計された。処置は30分間行われ、4時間後に追跡調査が行われた。仮説として、実験群は対照群に比べて高い鎮痛効果が得られるとした。発症時間と効果の持続時間も測定した。
結果:疼痛の平均持続時間(10.3年)は両群とも同程度であった。主要アウトカム指標は、10点満点の疼痛尺度を用いて、治療終了後30分後の疼痛の軽減であった。疼痛の軽減は対照群よりも実験群の方が大きかった(平均軽減度の差=0.72、95%CI 0.15-1.29、p=0.014)。疼痛レベルの統計学的に有意な差は、治療開始5分後の最初の測定から治療終了後120分後までに観察された。疼痛に関連した運動の減少は、プラセボ群よりもアクティブヒート群の方が大きかった(p = 0.04)。
結論:高レベルのパルス熱(45℃)は、主要エンドポイントおよび治療後2時間の間、37℃の定常熱と比較して有意に高い鎮痛効果を示した。鎮痛の発現は急速で、治療後5分以内であった。本試験の結果は、慢性腰痛モデルでは十分に理解されていない温熱鎮痛のメカニズムと特性についての洞察を提供するものである。
徒然に
ディスカッションにて記載されているが、この温熱療法による治療効果については、実験群は対照群と比較して0~10の標準的な数値疼痛尺度で0.7ポイントの疼痛低下が得られたとある。
この結果は、なんと、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)21やオピオイドによる慢性腰痛と同等である。
驚くべきことは、45℃で30分間のパルス熱を与えた実験群では、熱を止めてから120分間痛みが軽減され、有意な持続効果が認められたことである。
他にも熱によるキャリーオーバーのような効果が観察されていますが、この現象は十分に研究されておらず、説明もされていません。
TRPV-1((Transient Receptor Potential Vanilloid 1).)などの末梢性受容体の脱感作によるものなのか、より中枢的なメカニズムによるものなのかは不明であるとの考察がなされておりました。
まずは、自身でもカイロを使った腰痛緩和など試してみてください。
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