早めの暴露がアレルギーから身を守る

 漢方外来を見学してきました。

 検査をせずとも、患者さんから発せられる所見を取りに行くことで集められる情報から治療を決定していく。専門家の裁量が大きく、未知がたっぷりなのに、脈診が治療で良くなったり、腹診で診ていたコリも取れたりと数値などの間接的ではなく直接的に患者さんと治療の改善を共有出来る点も漢方の魅力的な点である。そして、何の主訴を言われても驚かずに対応出来る理論も実はあることに面白みを感じてやまない。

 さてさて、今日はアレルギーに関する論文をご紹介します。

牛のミルクアレルギーを予防するための新生児への粉ミルク導入の無作為化試験。

Randomized trial of early infant formula introduction to prevent cow`s milk allergy.

Sakihara T, Otsuji K, Arakaki Y, et al.  J Allergy Clin Immunol. 2020 Sep 2. pii: S0091-6749(20)31225-2. doi: 10.1016/j.jaci.2020.08.021.

背景:これまでの研究では、牛乳アレルギー(CMA)に対する牛乳タンパク質の早期導入による予防効果について、相反する証拠が得られている。

目的:無作為化比較試験を通じて、一般集団における CMA の一次予防において、牛のミルク(CMF)を早期に導入することが有効な戦略となりうるかどうかを判断することを求めた。

方法:日本の沖縄の 4 つの病院から新生児を募集した。参加者は、生後1~2ヶ月の間にCMFを1日10mL以上摂取する群(摂取群)と、CMFを回避する群(回避群)に無作為に割り付けられた。忌避群では、必要に応じて大豆粉ミルクで母乳を補った。CMAの発達を評価するために、生後6ヶ月の時点で経口フードチャレンジを実施した。両群とも生後 6 ヵ月までは継続的な母乳育児が推奨された。

結果:2つのグループへの無作為化のために504人の乳児を同定した。全参加者のうち12人の保護者が介入を拒否したため、研究サンプルは修正意図対治療分析のために491人(摂取群242人、回避群249人)で構成されていた。摂取群242人のうちCMAは2例(0.8%)、回避群249人のうちCMAは17例(6.8%)であった(リスク比=0.12、95%CI=0.01~0.50、P<0.001)。リスク差は6.0%(95%CI=2.7~9.3)であった。両群の参加者の約70%は生後6ヵ月の時点でも母乳で育てられていた。

結論:生後1~2ヶ月の間にCMFを毎日摂取することで、CMAの発達を防ぐことができる。この戦略は母乳育児と競合しない。

 

牛乳アレルギー

 牛乳アレルギー(CMA)は幼児期に比較的多く、有病率は0.5~4.9%と推定され、生後5年以内に約50%の子どもがCMAを改善するとされています。

 日本では、新生児とその母親は通常、出生後1週間は産院に入院し、その間、必要に応じて一部の新生児に牛のミルク(CMF)が与えられるようです。退院後はCMFの摂取を中止することが多く、これらの乳児の中には、牛乳タンパク質(CMP)を含むベビーフードの導入やCMFの再導入により、CMAを発症するリスクが高くなるものもあるというらしい。つまり、一旦中止するのが余りよくないこと、というのが仮設でしょうか。

 最近のシステマティックレビューや無作為化比較試験(RCT)のメタアナリシスでは、アレルゲン性食品を早期に導入することで、対応するアレルギーの発症を防ぐことができると報告されています。同様に、観察研究では、早期のCMP導入はCMA発症リスクの低下と関連していることが明らかになっています。ある研究では、生後15~94日目のCMPへの曝露は、生後14日目の曝露と比較して、CMA発症のオッズの増加と関連していました。しかし、早期のCMP曝露によるCMA発症予防の有効性を実証したRCTはないというのが現状です。

 そこで、本論文が待望のRCTとして登場したわけです。

 そして、日本人を対象にした研究というのも心強いです。

 

全体を通して、この研究の2つのメッセージが

  • 生後1~2ヶ月の間に10mL以上のミルクを毎日摂取することで、牛乳アレルギーの発症を防ぐことができます。
  • この方法は母乳保育とは競合しない。

という上記の2点でした。

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