精神医学とオンライン診療

 気合を入れて参ります。

 私が目に止まった論文を紹介しつつ見解等をいれこんでいきたいと思います。

Effectiveness of a Digital Cognitive Behavior Therapy–Guided Self-Help Intervention for Eating Disorders in College WomenA Cluster Randomized Clinical Trial
Ellen E. Fitzsimmons-Craft, et al. JAMA Netw Open. 2020;3(8):e2015633. doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.15633

 

大学生の摂食障害に対するオンライン認知行動療法に基づく自助介入の有効性

要約

重要性:摂食障害(ED)は、大学キャンパスでは一般的な重篤な精神疾患ですが、影響を受けた人のほとんどは治療を受けていません。オンラインによる介入は未治療の方々に治療介入をもたらす可能性がある。

目的:摂食障害のある大学生女性の転帰を、通常のケアへの紹介と比較して、コーチングされたオンライン認知行動療法(CBT)介入が改善するかどうかを判断すること。

デザイン、設定、参加者:このクラスター無作為化試験は、2014年から2018年にかけて、米国の27大学で実施された。ビンジパージED(閾値提示とサブ閾値提示の両方を有する)を有する女性を、登録大学から募集した。690人の参加者を介入後最長2年間追跡調査した。データ解析は2019年2月~9月に実施した。

介入:大学は介入、デジタルCBTガイド付き自己啓発プログラム「Student Bodies-Eating Disorders」、または通常のケアへの紹介に無作為に割り付けられた。

主なアウトカムと測定方法:主なアウトカムは、EDの精神病理学全般の変化であった。副次的転帰は、過食や代償行動からの離脱、ED行動頻度、うつ病、不安、臨床障害、学業障害、治療へのアクセスの実現でした。

結果:EDを有する合計690人の女性(平均年齢[SD]、22.12[4.85]歳、414人[60.0%]白人、120人[17.4%]ヒスパニック、512人[74.2%]学部生)が分析に含まれています。EDの精神病理については、介入群では介入後の評価時に対照群と比較して有意に大きな減少が認められた(β[SE]、-0.44[0.10];d = -0.40;t1387 = -4.23;P < 0.001)、またフォローアップ期間(β[SE]、-0.39[0.12];d = -0.35;t1387 = -3.30;P < 0.001)。介入後の評価時(オッズ比、1.48;95%CI、0.48-4.62;P=0.50)またはフォローアップ時(オッズ比、1.51;95%CI、0.63-3.58;P=0.36)におけるいかなるED行動からの禁欲にも有意差は認められなかった。対照群と比較して、介入群では、暴食(率比、0.82;95%CI、0.70-0.96;P = 0.02)、代償行動(率比、0.68;95%CI、0.54-0.86;P < 0.001)、抑うつ(β[SE]、-1. 34 [0.53]; d = -0.22; t1387 = -2.52; P = 0.01)、および臨床的障害(β [SE]、-2.33 [0.94]; d = -0.21; t1387 = -2.49; P = 0.01)が介入後の評価で認められたが、これらの改善は暴食を除くすべてのアウトカムについて追跡期間中も維持された。学力障害の点では群間に差はなかった。介入参加者の大多数(385人中318人[83%])が治療的介入を開始したのに対し、対照参加者の28%(追跡データが利用可能な271人中76人)のみがEDの治療を求めた(オッズ比、12.36;95%CI、8.73-17.51;P < 0.001)。

結論と関連性:このクラスター無作為化臨床試験では、コーチングされたオンラインCBT介入と通常のケアへの紹介を比較したところ、介入は長期の追跡調査を通じてEDの精神病理、代償行動、うつ病、臨床的障害を減少させ、治療へのアクセスを実現するのに効果的であった。すべてのED行動や学力障害に対する禁欲については、介入群と対照群の間に差は認められなかった。拡張性を考慮すると、EDを持つ大学生女性のためのコーチングされたオンラインCBT介入は、これらの障害に対する幅広い治療ギャップに対応できる可能性がある。

そもそも摂食障害とは?

単なる食欲や食行動の異常ではなく、1)体重に対する過度のこだわりがあること、 2)自己評価への体重・体形の過剰な影響が存在する、といった心理的要因に基づく食行動の重篤な障害です。摂食障害は大きく分けて、神経性食欲不振症(AN;神経性無食欲症、神経性食思不振症、思春期やせ症)と神経性過食症(BN;神経性大食症)に分類されます。ANには不食を徹底する「制限型」、あるいはむちゃ食いをともなってもそれに対する排出行為で代償しながら低体重を維持している「むちゃ食い/排出型」があります。一方、BNにはむちゃ食いを繰り返しながらも体重増加を防ぐために種々の不適切な代償行為をともなっていますが、ANと違ってやせに至らないことが特徴です。そのどちらにも明確に分類されない摂食障害(例:むちゃ食い障害)は、特定不能の摂食障害(EDNOS)と呼ばれています。世界保健機関(World Health Organization:WHO)が策定するICD-10診断基準では、摂食障害は「生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群」のひとつに分類されており、身体的要因と精神的要因が相互に密接に関連して形成された食行動の異常と考えられます。

厚生労働省

 摂食障害(ED)は、高い罹患率と死亡率、著しい障害、生活の質の低下を伴う重度の精神疾患です。大学キャンパスではEDの有病率が高く、米国の大学生女性の13.5%、大学生男性の3.6%が罹患しています。しかし、ED患者の20%未満しか治療を受けてないと報告があります。

この論文を受けて

 摂食障害やうつ病など精神的な病を患うと概ね普段どおりの判断が難しくなることが多い。若い方の場合、医療機関に受診するというのが時間や交通手段など様々な要因によって困難を伴うことが多い。

 そんな時に「オンライン診療」がもっと活躍してくれるとなんとありがたい事だろうと思う。風邪や体調不良で心底心配で受診したいといってやってくる人よりは、自分は大丈夫だと思っているけど周りの人に受診するように言われたとか、欠席の診断書が必要です、というのが多い気がする。こんな時に、さらっとお薬を処方してくれて最寄り薬局でお薬を受け取れるシステムが構築出来たら有り難いよなと日々感じています。

 それの延長線で、精神医学の領域では精神科に通院することそのものがハードルとなっているケースも多々ある。プライマリ・ケアの領域でふらっと精神疾患を患う方もよく現れる。そんな時に、このようなオンラインでカウンセリングシステムがあると、特に田舎では診療しやすいのになと思う。

 別の視点では、田舎では仕事がないから都会へ、なんて言う方々にとっても朗報でこれはオンラインで仕事が可能なので資格さえ持っていれば日本全国どこからだってカウンセリングすることが出来る。まあ、そういうようなシステム構築だよなと、思うのでした。

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